蒲田で読書してます(10)月村了衛『欺す衆生』はこの時代の『罪と罰』だった!
詐欺の話である。ここで描かれる詐欺は、「ないもの」を売る。存在するが、あるいは存在すると言われているが、その実「ないもの」。たとえば、アマゾン奥地のエルドラドを探索するため資金が必要だ、確実に見つけられると専門家も言っている、見つかった場合、30%の利息を載せて資金をお返しする。バカ言うなよ、と思う。でも、欺されるひとはいる。努力もせず(親の七光とか)使い切れないほどカネを持ってしまった、欲の皮の突っ張った人間。
本作は「豊田商事事件」からはじまり、「ライブドア事件」を経由しても絶えることのない、この手の詐欺に手を染めるひとたちを乾いた表現で描写していく。みんな、どこか絶望している。どうせこんなもんでしょ、という諦念が彼らを詐欺に走らせる。どこかドフトエフスキー『罪と罰』を思わせる。悪いのは世の中なのだろうか?
ちょうど本作を読み終えたころ、2020年9月18日に「ジャパンライフ事件」の報道があった。欺す衆生は、普通の顔をして、普段の生活を送りながら、強欲をひとたちからカネを巻き上げている、ということか。